センスを磨く

前向き

ある工業デザイナーの方が、
「デザインセンスは
 テーブルの上だけでほとんど磨けるけれど、
 最も難しく、かつ最も大事なことは
 人を思う心でサービスをすることだ」
と話されていました。
その方の事務所には十名ほどのスタッフがいるそうですが、
来客の予定があると、
「こういう人でこのくらいの年齢」とだけ話して
弁当を買いにいかせるそうです。
お客さまのことを考え、
いかによい弁当を買うことができるか、
それができない者に
よいデザインはできない
ということだそうです。
「絵を描いたりコンピューターを動かしたり、
そんなことはいつでもできる。
新人の時にお茶出しをやったり、
弁当を買いに行ったりしたことが、
後でどれほど役に立つか。
棚から食器を出してどう使うか考えているだけでも
センスを磨ける」
とてもいい話です。

このデザイナーが伝えようとしているのは、
「相手を思いやる力=おもてなしの心」こそが、
本当の意味での
“デザインセンス”だということだと思います。
お弁当を選ぶという一見地味な仕事にも、
・相手の年齢や好みを想像する力
・限られた時間や予算で最良の選択をする判断力
・目の前の人を笑顔にしたいという利他の心
そうした“感性”や“気遣い”が凝縮されているのだと思います。

私が会社で新人だった頃、
お茶出しは面倒な雑用だと思っていたのですが、
上司から「仕事に雑用は無い、雑にするから雑用になる」と言われ、
はっとしたことがあります。
どんな小さな仕事にも心を込めて、
丁寧に向き合う姿勢が
やがて大きな信頼や成長に繋がっていく。
そして、それは”誰かを思いやる力”や
”本質を見抜く目”を育てる
最良の訓練でもあると思います。

このような価値観を、
次の世代に伝えていくには
ただ単に言葉で教えるのではなく、
一緒に体験し、感じてもらうことで
深く伝わるのではないかと思います。
一緒に行動し、
行動の中にある心の動きを一緒に振り返る、
そうすることで、
マニュアル通りにしかできないサービスではなく、
人を思う心を大切にしたサービスで
おもてなしができるようになるのかなと思います。

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